0:47 ゲスト紹介、4:12 ターニングポイントとその動機、9:12 Tech x Mgmtの交差点で必要なスキル、16:27 今活かされている留学中の学び・経験、22:53 SDM/TPP/MBA向きな人、28:18 Q&A
※1.5倍速など早送りで聴かれることをお勧めいたします。
Massachusetts Institute of Technology (MIT) 卒業生である、文部科学省で核融合・原子力国際を担当されている加々美綾乃さん(System Design and Management (SDM) program卒業)と、東海旅客鉄道株式会社でテキサス高速鉄道プロジェクトを担当されている日出間崇史さん(Technology and Policy Program (TPP) 卒業)に、Technology x Managementのキャリアストーリーをお話いただきました。
※2021年1月23日に開催しました MIT SDM Alum Session #2 を録音・編集したものです。ここで話した内容はGuest speakersの個人的な見解を示したものであり、所属する組織の公式の見解等を表しているものではありません。
Agenda
- ゲスト紹介
- 留学プログラムの内容 [以下show notesで記載]
- 現在の仕事内容 [以下show notesで記載]
- テーマ#1 ターニングポイントとその動機
- テーマ#2 TechnologyとManagementの交差点で必要なスキル
- テーマ#3 今活かされている留学中の学び・体験
- テーマ#4 SDM/TPP/MBA向きな人
- Q&A
ゲスト紹介
- 加々美さん:東大院理学系研究科(博士) -> 文部科学省 -> MIT SDM (2017-2019) -> 文部科学省、核融合・原子力国際担当
- 日出間さん:東大院新領域(修士) -> JR東海 -> MIT TPP (2015-2017) -> JR東海、テキサス高速鉄道プロジェクト担当
- ※Guestのご経歴は MIT SDM Alum Session #2 をご覧ください。
MIT留学中の活動 [show notesのみ]
- 加々美さん
- MIT System Design and Management (SDM)
- 1996年設立。Sloan School or ManagementとSchool of Engineeringのジョイントプログラム
- テクニカルリーダーの育成がMission。DegreeはMaster of Science in Engineering and Management。12ヶ月~21か月のフレキシブルなプログラム。
- 各自の専門性をベースとして以下を目指す:
- システム思考をベースとした課題解決能力の育成
- グローバルな環境でのリーダーシップの発揮
- Masterの学生約60名、SDM Coreクラスのみを受講するCertificateの学生約40名と共に、座学とプロジェクトを通してSystem Architecture、Systems Engineering、Project Managementを学ぶ。
- MIT SDM留学の動機
- 科学技術政策に携わる中で、Tech x Policy / Tech x Managementを学びたかった。
- サイエンスが大好き。基礎研究の成果を実用化につなげるための仕組みづくりに興味。
- MITでの修士論文タイトル:「日米のバイオテック・スタートアップエコシステムの比較分析」
- 留学中の課外活動
- ボストン日本人研究者交流会で幹事を務める。
- BioLabs(BionInnovation Labs)(startup向けにシェアラボ運営)でサマーインターン。
- MIT System Design and Management (SDM)
- 日出間さん
- MIT Technology and Policy Program (TPP)
- 1976年設立。DegreeはMaster of Science in Technology and Policy。
- 組織再編を経て、現在はInstitute for Data, Systems and Society (IDSS) の中の1プログラム。
- 科学者・エンジニア向けの公共政策プログラム。専門分野 x 公共政策。
- STEMバックグラウンドの人材に対し、政策を通じて社会を変革するための視座を提供 (※2015年留学当時)
- 政治・経済・公共政策・哲学等と、STEMが交差する領域を扱う必修科目
- システム思考・リーダーシップ開発・政策評価方法などの選択科目
- 個々人の専門分野から選択する授業・研究・論文執筆(重め)
- 同級生35名~40名程度、男女半々、留学生50%。同級生の結びつきが強い。学生のバックグラウンドは多様(エネルギー、環境、公衆衛生、薬事、軍事、サイバーセキュリティ、航空宇宙、交通他)。
- 留学中の活動:「人・本・旅」(出口治明氏)
- 人:あらゆる分野で世界最高峰の人材の集積地
- 本:読書・研究に最適の環境(時間 x 文献量)
- 旅:生のアメリカを味わい尽くす -> 現在の業務(テキサス高速鉄道)の意義を実感
- MIT Technology and Policy Program (TPP)
現在の仕事内容 [show notesのみ]
- 加々美さん
- 文部科学省:(科学技術)政策の実現。研究者・企業経営者との対話、事業予算確保、研究開発プロジェクト支援、データに基づく政策推進・評価、戦略的な国際連携、政策の広報、など多岐にわたる。
- 核融合・原子力国際担当
- 核融合:脱炭素、エネルギー自給を同時に実現する夢のエネルギー。
- ITER計画@フランス:2050年代に実用化の目処を得る。
- Systems Engineeringのオバケ。複数国にまたがる複数ベンダからの調達。
- 多数のstakeholders:補助先(QST:量研機構)、大手重工・中小企業、政府関係者、省内・他省庁、海外研究機関、政治家、世論、等。
- 日出間さん
- JR東海 テキサス高速鉄道プロジェクト
- テキサス州のDallas/Fort WorthとHouston約390kmを結ぶ高速鉄道プロジェクト。
- JR東海の役割:日本のメーカー連合の一員として、鉄道事業者が担うべき役割を担当:
- システムインテグレーション
- システム全体の性能確認試験
- 運行・保守ノウハウの提供および要員訓練
- 複数のステークホルダ間の調整が発生。米国商習慣の理解、ネゴシエーションスキルが必要。政治・法律・技術・商務の複数領域に跨る知識が求められる、システム思考がとても役立つ仕事。
- JR東海 テキサス高速鉄道プロジェクト
ターニングポイントとその動機
- 加々美さん
- 博士課程 -> 文部科学省:アカデミック、基礎研究の内容を社会で実用化させ、世の中を変えることに携わりたい。研究だけでなく仕組みづくりとしての携わり方が文部科学省ではできる。
- 文部科学省 -> MIT SDM留学:研究内容を基礎から実用にもっていくには文部科学省だけでなく、他省庁、企業など複数のstakeholdersと共に進める必要あり。このマネジメントを学びたいと思って留学を決意。留学中、研究内容を社会実装するためのボストンのエコシステム(大学、企業、startup、インキュベータ、アクセラレータ)を知れた。
- 日出間さん
- JR東海 -> MIT TPP留学:経営や経済学など社会に関する知識をつけたい。社内の留学制度をつかい、今後のキャリアも踏まて体系的にこれら知識をつけたい。
Technology x Managementの交差点で必要なスキル
- 加々美さん
- TechnologyとManagementは物事を見る視点が異なる
- Technology:一つの領域を掘り下げる、詳細を詰めていく
- Management:周辺分野を理解して各領域の位置づけ・文脈を考える
- 交差点では一つの領域を掘り下げるスキルと、一歩引いて全体を俯瞰するスキルの二つが必要。その上で場面に応じてうまく切り替えるスキルが肝要。
- TechnologyとManagementは物事を見る視点が異なる
- 日出間さん
- 自分のTechnology領域における深い知識とともに、経営・経済などManagementする上で基礎となる知識・体系的な理解が必要。
- 交通工学では、データ分析とともに経済学の知識を使う。データおよび分析方法がが経済的に意味があるか、という問いが常に付きまとう。
Q. HarvardなどMIT以外の講義を受けたことがあるか?
- 日出間さん
- Harvard Kennedy Schoolの交通分野に関する授業を受講。交通プロジェクトの問題点をケーススタディベースで学習・議論。鉄道のみならずモビリティ全般に関するプロジェクトを知れてよかった。
- 加々美さん
- Harvard Business School、Harvard Kennedy School、Tufts University、Wellesley College (名門女子校) などからMITの授業を受講している学生もいる。
- 補足
- コロナ禍により多くの授業がバーチャルで提供されているため、これまで障壁となっていた通学時間に起因する授業時間の問題を考慮する必要がなくなり、他大学の授業が受講しやすくなっている。
今活かされている留学中の学び・体験
- 加々美さん
- MIT SDMで学習した内容:ITERプロジェクトを進めるうえで、MIT SDMで学習したProject Managementで用いられる考え方や手法が直接役立っており、また研究者や技術者と会話する上でもこれらの知識が役立っている。
- ネットワーキング:バックグラウンドであるバイオ系の研究者、製薬会社、ベンチャーキャピタルとのネットワーク。インターン先との関係が今でも続いている。
- 課外活動:MIT Sloan School of ManagementのHealthcare Club、Technology Clubなどのイベントに参加。その他、日本人コミュニティ、Cambridge Innovation Centerでのイベントに参加。
- 日出間さん
- 2016年大統領選挙を通じてアメリカ人の考えや認識を肌で感じることができた。この経験が現在の高速鉄道プロジェクトでとても活きている。
SDM/TPP/MBA向きな人
- 加々美さん
- Engineeringの専門性を活かしたい人はSDM、Management全般を学びたい人はMBA、という認識。
- SDM:ほぼ全員がエンジニアバックグラウンドのため、Engineeringの専門性を活かしつつManagementに進みたいひとにお勧め。Project ManagementなどEngineeringを背景に持つ分野を学ぶことができる。
- MBA:Strategy、Accounting、MarketingなどManagement全般を学びたい人にお勧め。
- 日出間さん
- 一般論
- SDM:自身が持つ技術をどう経営に活かすかが学べる。民間企業に勤めるEngineerにお勧め。
- TPP:技術と政策を学べる。官僚の方で、技術で社会的インパクトを与えたい人にお勧め。
- 自身は民間企業からTPPに留学し、官と民の考え方の違いを体感。相手の立場を理解する上でとても良い経験となった。この経験から、民間からTPPへ、また官僚の人がSDMへ留学することもおすすめ。
- 一般論
Q&A
- [28:22] 国際プロジェクトでの苦労、留学経験が役立ったことは?
- 加々美さん:他国のプロジェクトの進め方が日本と違う。異文化に対する理解、寛容さ。
- 日出間さん:ビジネス上の駆け引きがとてもシビア。留学経験はアメリカ人の考え方を理解する土台となった。
- [32:00] 日本の技術を輸出する際、日米の規制・文化・慣習の違いで気を付けたほうがいいこと、苦労したことは?(日出間さん)
- アメリカは事業者のことを信用していないため、規制が細かく決められている。日本の技術をそのまま持っていけばよいというわけではない。
- [34:36] 留学前にやったほうがいいことは?
- 加々美さん:日本や自身の会社のことを理解し、自分の言葉で語れるようにしておくこと。
- 日出間さん:英語!学習予定の分野の基礎を事前勉強すること(日本語でよいので)。
- [37:12] 留学前後でキャリア観はどう変化したか?
- 加々美さん:博士卒の強みを自信にできた。
- 日出間さん:自社内の視点だけでなく、より広い視点で自分のスキル他を客観的に見るようになった。
- [40:13] 社費留学による制約は?
- 加々美さん:インターンが無給であること以外、特に制約は感じなかった。むしろメリットを感じることが多かった。
- 日出間さん:メリットが大きい。自分の好きなことに時間を自由に使える。
- [43:35] 他都市と比較したボストンの強み・弱みは?
- 加々美さん:コンパクト&公共交通機関が充実しており車不要(西海岸は車必須)、留学生に対して理解がある。ただし冬は寒い。
- 日出間さん:各分野のスペシャリストが集積。ただし本当のアメリカを理解するにはギャップがある。
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