MIT卒業生である、アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社 (AWS Japan) でエンタープライズソリューションアーキテクトを務められている柏村拓哉さんと、住友重機械工業株式会社でロボティクス分野を研究されている衞藤晴彦さんに、Engineering x Businessのキャリアストーリーをお話いただきました。
0:30 ゲスト紹介、2:59 キャリアのターニングポイント、15:31 留学中の学び・経験で今活かされていること、21:05 ビジネスに変革を起こすには、32:31 変革を起こすためのスキル、39:35 留学中に苦労したこと(Q&A)
2021年5月16日に開催しました MIT SDM Alum Session #3 を録音・編集したものです。ここで話した内容はGuest speakersの個人的な見解を示したものであり、所属する組織の公式の見解等を表しているものではありません。
Agenda
- ゲスト紹介
- テーマ#1 ターニングポイント
- テーマ#2 留学中の学び・経験で今活かされていること
- テーマ#3 ビジネスに変革を起こすには
- テーマ#4 ビジネスに変革を起こすためのスキル
- 留学中に苦労したこと(Q&A)
ゲスト紹介
- 柏村拓哉さん:東大院情報理工(修士) -> 日鉄ソリューションズ -> MIT SDM (2017-2019) -> AWS Japan エンタープライズソリューションアーキテクト
- 衞藤晴彦さん:九大院理学府(修士) -> 住友重機械工業 研究員 がん治療用陽子加速器 -> MIT客員エンジニア (2017-2019) -> 住友重機械工業 研究員 ロボティクス分野
- なおMIT在学中、お二人とも同時期に Japan Tech Trek Innovation Discovery Japan の幹事を務められました。Guestのご経歴は MIT SDM Alum Session #3 をご覧ください。
キャリアのターニングポイント
- 柏村さん
- 応用数学 -> 日鐵ソリューションズ:研究者の道も考えたが、より短いスパンで社会へ貢献していきたいという思い、ITインフラが重要との認識から、ITベンダーへ就職。
- 日鐵ソリューションズ -> MIT SDM留学:社内だけでなく社外とのかかわりを通して、視野を常に広く持ちたいという思いや、また技術とともにビジネスサイドの理解も重要という認識が強まった。また元々留学したいという動機があり、親族や会社の経営層も留学をするなど留学が身近にあったため、留学を選択。技術とビジネスが両方学べるMIT SDMに進学。
- MIT SDM留学 -> AWS Japan:さらなる成長を目指してチャレンジングな環境に身を置きたい、という思いから、専門外であったクラウド、外資というこれまでのキャリアと違うポジションにトライ。技術とビジネス両方できる点が魅力。
- 少し先の未来を見据えて、その都度自分に何が必要かを考えてキャリアを選んできた。
- Q. 日系と外資系の違いは?:外資系というよりはAWSについて。技術が早く進化する中でのチャレンジングな環境、社員同士の切磋琢磨、グローバルに関わる機会が多いことがいい点。日系と比較して、チームというよりは個人プレーの要素が強い印象。
- 衞藤さん
- ロボティクスが心の琴線に触れた!
- 社内でロボティクス分野に関われるかどうかは分からなかったため、プライベートで始める。すると徐々に社内でもロボットに詳しい人、という評判に。
- 会社はMITのロボティクス研究室とコネクションがあり、常々留学を希望、5年越しの留学。運要素が大きいものの、初めてのロボティクス分野で、ひたすら個人的に仕込みを行っていた。
- Q. ロボティクスに時間を投じる上での障害は?どうやって克服した?:現業の業務がある中で時間を捻出するのは困難、残念ながらうまい解決方法は見つからず、業務後夜中まで工作するなどプライベートの時間を費やした。モチベーション維持のため、エンジニアの交流会に参加する、個人開発者の展示会に参加し、成果物を出展していた。
留学中の学び・経験で今活かされていること
- 柏村さん
- ハードスキル
- 全般:英語
- 授業での学び:システム思考による問題の分解・分析、ビジネス分野の勘所
- インターン:グローバルスタンダードの開発手法などを経験
- ソフトスキル:留学したからこそ得られたこと
- 自分の個性とは何かを常に考える意識
- 多様な文化、バックグラウンドをベースとした、個性を重要視したチームワークの経験
- MITのphilosophyであるMens et Manus (Mind and Hand) の体感と実践
- ハードスキル
- 衞藤さん
- Mens et Manus (Mind and Hand), Deploy or Die の体感と実践
- 前例がないソリューションについて、ハリボテでもいいからモノを作って見せる
ビジネスに変革を起こすには
- 柏村さん:AWSの顧客のビジネスを変革するには
- 主体は社内、これを社外から如何に支援するか、が重要。
- リーダーからの発信が重要であると考えており、現場の変革アイデアを前に進めるためなど、組織のトップに提案するトップアプローチを支援する。
- 小さい成功を素早く積み重ねることを支援する。成功経験があると士気が上がる、周りを巻き込めるため。この意味でリソースが可変であるクラウド環境はとても便利であり、柏村さん自身がプロトタイプ/デモを作って顧客提案することもある。
- プロトタイプ/デモを作って提案する際、社内でこれらを理解するスキルがある人(役職よりもスキルを重視)を割り当ててもらい、プロトを体験してもらうようにしている。
- 衞藤さん
- 研究開発グループ初の新規事業をやるには、まず上司に課題を課題として認識してもらう必要がある。研究開発グループのメインタスクは主力事業・製品の高度化や製品の次世代に貢献することであり、課題の認識に差があるため。
- 最後はトップダウンが重要だが、その前に現場と問題意識を共有することが、上司の説得、その後の実際の取り組みの両方で重要となる。ただし泥臭い。技術開発のみならず色々な部署の人の話を聞いて情報を集めることを研究者/エンジニアがやらないといけない。
- 既存のサービス・製品に従事している人たちを巻込むための体制づくりが重要。こういう前例を作りましょうなどと鼓舞する、ビジョンをプロトタイプで示すことなどが方法の一つ。
- 新技術を実際に使ってもらうためには最終的にトップの説得が重要。
ビジネスに変革を起こすためのスキル
- 柏村さん
- ビジネスの知識が必須。CEOを説得するには技術のビジネス的な便益を話す必要がある。
- システム思考、データ分析は説得するための重要なスキル。
- 衞藤さん
- アイデアにダメ出しされてもへこたれないこと。MITの研究室でボスと議論したresearch meetingがとてもよい経験だった。
Q. 技術の知識がない/分かってくれない上司をどう説得するか?
- 衞藤さん:説明にコストをかけることを厭わず、動画を作って成功イメージを見せる。3Dで動作イメージを共有する。
- 柏村さん:相手が理解できる言葉、重要視する点に翻訳する。相手にとって分かりやすいmetricsを使って説得する。相手が当たり前と思っていることなど相手のバックグラウンドまで考えた上で、相手が重視する点を考えること。
留学中に苦労したこと
- 柏村さん
- MIT SDMのBootcamp。英語スキルがまだ十分でない中、初対面のメンバとチームを組まされ、1週間で成果を出すことを求められた。帰宅が12時を回ることも。
- ただしAcademic Directorもこれが最もハードな経験と言っており、これを乗り越えられればあとは大丈夫だった。
- 衞藤さん
- 趣味であったロボティクスを、MITの教授と議論しなければいけなかったこと。アイデアに対してダメ出しされてもへこまないこと。人格とアイデアは分けろというものの多かれ少なかれ人格がアイデアに乗っているため、最初はとてもつらかった。作家さんや他のクリエーターも経験していること、などと言い聞かせた。
- アイデアが出ないこと。シャワーや家事をしているときも考え続けることが大事。ランダムなプロセスをやっているときにアイデアが出てくることが多い印象。
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