ゼネコンで建築機械系エンジニア、新規事業開発を経験されたのち、社費派遣にてCambridge MBAを修了、現在はビジネスデベロップメントに従事されている小嶋美由希さん。Engineering x Businessのど真ん中で仕事をされてきたキャリアについてお話いただきます。
0:35 現在の業務、2:30 新規事業開発のやりがい、5:00 うれしかったこと、6:15 エンジニアバックグラウンドのメリット、9:08 MBAでの学びが活かせていること、13:10 ビジネスデベロップメントの特徴と課題、17:52 大切にしていること、23:48 建設 x デジタルの取り組み、27:00 5年後の自分
現在の業務
- ビジネスイノベーション推進部にてビジネスデベロップメントを担当。MBAで学んだマーケティング、戦略、アライアンスの組み方などを活かして、新規事業の注力分野であるエネルギー、DX、宇宙などでシーズを開発している。
- 社内で新規事業を組織立ててやっていくためのフレームワークを検討している。
新規事業開発のやりがい
- 意思決定のスピード感がスタートアップ企業と合わないところが課題。
- 建設業という業界、また大企業という特殊な環境が要因か。
- 大企業の新規事業開発ではオープンイノベーションが肝要と考えているが、スタートアップや海外企業とのパートナーシップを組む際に意思決定のスピードが遅くなっており、信頼を損なうことがある。また事業開発のスピードが合わず問題になったり、交渉が難しかったりする。
- マイルストンを決め、意思決定が遅いことを事前に共有することで、信頼を損なわず問題を大きくしないようにしている。
うれしかったこと
- 最初の3年エンジニアとして設計をしていたときに、小嶋さんにやってもらってよかった、と顧客から直接言ってもらえたこと。
- 自分が作った/関わったモノが世の中に出て、人を幸せにしたり社会の役に立つことを感じられることが、この仕事のモチベーションになっている。
エンジニアバックグラウンドのメリット
- 設計をやっていた時の経験が、現在のビジネスデベロップメントでとても活きている。
- 設計をやっていたときは、本社にこもって机に向かって計算しているよりはむしろ営業のようなイメージであり、顧客に足を運んでニーズをよくヒアリングしていた。
- 顧客の考え、将来的に顕在化するニーズなどを考える際、設計時のヒアリング経験と知識がとても活きている。
- ※意匠設計、構造設計、機械設計、電気設備の他、顧客、地権者など非常に多くのstakeholderがいるのが建築系エンジニアの特徴。設計後も、現場で建設を進める際に、現場の業者の方々をまとめる必要があり、stakeholder managementが必須のスキル。
MBAでの学びでビジネスデベロップメントに活かせていること
- ビジネスデベロップメントは成功が確約されていないビジネスのお手伝いをすることであり、ある一つのハードスキルを活かすというよりは、幅広いビジネスのハードスキル(Finance、Accounting、Management、Strategy、Economics、各種フレームワークなど)を適切なタイミングで活用してサポートしている。MBAを通じてたくさんの引き出しを持てたことが活かせている。
- マーケット調査、ターゲティング、事業戦略立案など、ビジネスデベロップメントの各フェーズでフレームワークを活用している。PESTEL (Marketing)、5 Forces (Strategy)、3P、3C/4Cなど。
建設・エネルギー産業の大企業でのビジネスデベロップメントの特徴と課題
- 特徴
- 建築・エネルギー関係のビジネスは、SaaS系のビジネスと比較してスケールしない。
- 大企業の新規事業開発では、自社のアセットや技術を活かすことが重要。
- これらを踏まえて、新規事業の一つとして、建築技術を活かして、再生エネルギーへの投資開発をして事業主としてコミットしている。
- 課題は大きな初期投資の判断。再エネ投資ではアセットを持つほど利益が出るため、初期投資額を大きくする傾向にある。しかし初期投資額を決めるには同時にビジネスリスクの見積がとても重要となる。例えば洋上風力などまだ比較的新しい技術が必要な分野に対して何千億の投資判断をすることはとても難しい。安全性もリスクの一つに入ってくる。
- また、再エネはどうしても高価であるため、再エネ投資は補助金に一部を頼らざるを得ない。SDGsなどを考慮してサステナブルなビジネスを作ることが会社として重要と考え、腹をくくる必要がある。
大切にしていること
- 新規性の高いものへ投資:既存のマーケットのシェアを上げることは難しいため、新しいマーケットにアプローチできる可能性がある新規性の高いものに投資をしたい。
- 社会課題に立ち向かうこと:サステナブルな事業、環境、社会を作り上げることが重要と考えている。単に収益の最大化ではなく、サステナブルな社会に貢献するため、会社のアセットを使って社会課題にどうアプローチできるかを常に考えている。
- 上記2点を実現するために考えていること・行っていること
- 新規事業に対する社内での意見や反対に対して、マクロな観点を踏まえつつその重要性を強調して一つ一つ丁寧に回答していくことも、ビジネスデベロップメントを担当する者の使命と考えている。
- ロジカルな説明やfactだけですべて納得してくれる人ばかりではない。納得してくれない人に対しては、まずは会社が注力していることや直近の事業に対して貢献して信頼関係を築く。その過程でkey personを「教育」するアプローチをとっている。
- 積極的な発信を心掛けている。Teamsで脱炭素のニュースを意図的にたくさん投稿したり、部署横断の意識を高めるために部署をまたいで勉強会を企画するなど。
- 勉強会企画の際は、脱炭素に興味を持っている研究者などに声をかけて仲間になってもらい、勉強会のサポートをしてもらった。会社の自由な雰囲気がこの勉強会開催をやりやすくしてくれている。
建設 x デジタルの取り組み
- 現場の施工の省力化が課題。人口減少に伴う職人の減少、労働時間削減、などが背景。
- いくつかの取り組み
- 施工サイド:ロボットの導入、ドローン撮影による進捗管理
- 設計サイド:Generative Design(設計の自動化)
5年後の自分
- 自分の事業を一つ持ちたい。大企業のアセットを活かした社内起業を目指す。
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