1:07 ゲスト紹介、5:22 現在の仕事内容、16:23 チャレンジングだった仕事、26:10 キャリアチェンジ、39:35 Eng x Bizの交差点で必要なスキル、45:40 MIT SDMでの学びが卒業後のキャリアでどう生かされているか、53:10 イノベーションエコシステム
MIT System Design and Management program (SDM) の卒業生である、日本最大級のイノベーションセンターCIC JapanでDirectorを務める名倉勝さん、宇宙ベンチャーでManagerを務めるispaceの氏家亮さんに、Engineering x Businesssのキャリアストーリーを話していただきました。
※2020年11月1日に開催しましたMIT SDM Alum Session #1を録音・編集したものです。
Agenda
- ゲスト紹介
- 現在の仕事内容
- テーマ#1 チャレンジングだった仕事
- テーマ#2 キャリアチェンジ
- テーマ#3 EngineeringとBusiness or Managementの交差点で必要なスキル
- テーマ#4 MIT SDMでの学びが卒業後のキャリアでどう生かされているか
- Q&A イノベーションエコシステム
ゲスト紹介
- 氏家さん:東北大院 -> JAXA -> MIT SDM -> ispace
- 名倉さん:東大院(博士)-> 文部科学省 -> MIT SDM -> 経営コンサル -> VC -> CIC Japan
- ※お二人の経歴はこちらのページをご覧ください。
- 共に2015年にMIT SDMに入学された留学同期(SDM2015)。
- 氏家さんは妻と小さいお子さんを帯同しての留学。家族全員にとって良い経験だった。
現在の仕事内容 – 名倉さん
- CIC Japan合同会社でDirector (Community Development) を務める。日本のイノベーション環境を整え、より良くしていくべくコミュニティ開発に取り組む。
- CIC:Cambridge Innovation Center。米国マサチューセッツ州ケンブリッジ市発のイノベーションコミュニティ支援企業。ボストン/ケンブリッジ市を中心に、Tokyo含め世界9都市に展開。
- CIC Tokyo:2020年10月1日にオープンした日本最大規模のスタートアップ支援施設。
- 虎ノ門ヒルズ15F、16Fに約6000平米、約160の小オフィスを構える。
- スタートアップ企業が約200-300社集まる(他だと20-30程度、一桁大きい!)。
- 霞が関徒歩5分の立地を生かし、スタートアップのみならず大企業、投資家、研究者、官僚、弁護士、会計士、弁理士等が集い、イノベーションを加速させる。
- オープン時より小池都知事、東京大学五神総長、平井卓也大臣他が訪問。
- Venture Cafe Tokyo:毎週木曜日CIC Tokyoでイノベーションイベントを開催。参加費無料オープンイベント多数あり、年間約3万人が参加する国内最大のイノベーションコミュニティ。
現在の仕事内容 – 氏家さん
- 宇宙系スタートアップispaceで、月面着陸船のシステム設計チームのManagerを務める。
- 目的:水などの月面資源を開発し、地球と月を一体とした新しいeco-systemを創造する。
- 地球の静止軌道衛星を低コストで開発可能。
- 月面資源を利用したより効率的な火星探査。参考:米国NASAのアルテミス計画
- 2040年実現を目指してPhaseを3つに分け、現在Phase 1である月への高頻度輸送サービス確立に注力。
- 事業領域:ロケット切り離し後の月面着陸(ランダー)および月面探査(小型ローバー)。
- Funding:2018年Series A Fundingで$94.5 Million調達、当時日本最大。直近ではSeries Bで$3 Million調達、合計約130-140億円。
- 2022年、月面着陸と月面探査を担うM1を開発中。技術実証フェーズ。
チャレンジングだった仕事 – 氏家さん
- JAXA2年目、ESA (European Space Agency) との共同プロジェクトに志願。週何日もスペイン人と1:1で議論。怖いもの知らずで英語含め大変だったが、留学に向けた良い足掛かりになった。
- JAXA3年目、MIT教授との共同研究プロジェクトに志願。本プロジェクトに貢献し存在価値をアピールすることで留学につなげたかった。これまで携わったことがないシステム安全分野に挑戦。
- 現在。ベンチャーでシステム設計。泥臭い設計に挑戦。「おいしい牛肉を食べる前の牛を殺す作業」
- 留学の動機:
- 民間でなくJAXAを選択したこともあり、入社前から留学したいという希望があった。
- JAXAでは同僚にEngineeringバックグラウンドが多く、自身の理学バックグラウンドに対する劣等感を払しょくするためにも、留学してEngineeringを勉強したかった。
- MIT SDMを選択した理由は、エンジニアリングに加えてマネジメントも学べるため。
チャレンジングだった仕事 – 名倉さん
- 現在のCICでの仕事が最もチャレンジング。その時に取り組んでいる仕事が最もチャレンジング、という認識。
- 入省3-4年目で従事した、文部科学省でのイノベーション政策。
- 特に起業家教育政策策定のための新規予算獲得。政策の具体検討、財務省他への説明など、未知の分野での新しい業務であり、ストレッチする機会。
- MITや米国ケンブリッジ市など、世界各国のイノベーション政策についての知見が広がった。
- イノベーションを起こすために必要な起業家育成政策を検討する時、博士課程で培った大学での教育・研究プロセスに対する知見を活かすことができた。
- 新しいことに挑戦することはいつでも大変だが、成果がでるとうれしい。策定したEDGEプログラム(グローバルアントレプレナー育成促進事業)が今でもEDGEという名前を残しながら継続している。参考:次世代アントレプレナー育成事業(EDGE-NEXT)
キャリアチェンジ – 名倉さん
- キャリアに対する考え方
- 事前に計画するというよりは、その時その時で、状況を鑑みつつ面白そうだと感じた方向へ、躊躇なくキャリアチェンジしている。挑戦するほうがその後の役に立つと考えている。
- キャリアチェンジの動機
- 博士課程 -> 文部科学省:研究の別の側面に興味を持つ。ITERなど核融合炉研究を通じて、研究の大きな文脈を決める、国際プロジェクトのマネジメントや科学技術政策の決定プロセスに興味を持った。
- 文部科学省 -> 現職:MITでイノベーションエコシステムを勉強。安倍政権の後押しもあり日本でのベンチャーが盛り上がり始めており、ベンチャー支援に携わることで日本に貢献できると考えた。
- キャリア選択の基準・判断材料
- テクノロジーを活かした社会を作るという自身のMissionに従って、状況を鑑みて自分で判断している。人に相談することはあるが、人の判断に従うというよりは自分で決断する。
- 色々な方と会話する中で、次のキャリアに対する考え方が育まれていった。例えばMIT SDM Academic Director Dr. Bryan Moserと世の中の潮流・未来について議論したことが、キャリアパスを形作る一つの要素。
キャリアチェンジ – 氏家さん
- キャリアに対する考え方
- JAXAでは留学を含め、キャリアを事前に描いて行動してきた。最初に研究開発部門で自分の軸足を作り、留学経験を活かして軸足となる技術を広げ、留学後に自身の希望するプロジェクトに異動する、というキャリアパスを描き、それを実現してきた。
- ベンチャーに転職したのは、今しかできないことに挑戦したいという思いから。
- キャリアチェンジの動機
- 修士課程 -> JAXA:博士課程進学を検討していたが、周りの学生が就職するため3年間孤独な研究生活を続けることができるかどうか疑問に思った。民間に就職することも想像できず、業務内容やアカデミックへのキャリアパスがあることに惹かれてJAXAへ。
- JAXA R&D -> MIT SDM -> JAXA HTV-X:描いていたキャリア通り、自身が希望する宇宙ステーション補給機HTVの後継機プロジェクトHTV-Xに異動、従事できた。
- JAXA -> ispace:JAXAの業務改革プロジェクトを通じて、JAXAの仕組みやステークホルダーを把握。一方で、MIT留学他を通じて宇宙ベンチャーが盛り上がっていることを認識。バブル状態かもしれないが、逆に言えば5年後はチャレンジできないかもしれないと思い、今しかできないことをやってみようと考えた。
- キャリア選択の判断材料
- ベンチャーに転職した際は、特にロールモデルやメンターはいなかった。
- MIT SDM留学を通じて、世界のマクロなトレンドを認識した上で自分の位置づけを考えるようになった。
- 転職を検討する際、名倉さんやMIT MBA日本人留学生に相談し、自分の考えを整理するための「壁打ち」(リフレクション)を行った。
EngineeringとBusiness/Managementの交差点で必要なスキル
- 氏家さん
- エンジニアがビジネスの基礎的な部分を分かっていること。たとえばNet Present Value(正味現在価値)など。
- 一つの組織として動いていくときに、エンジニア側に立つ自分がビジネスの基礎的な部分を分かっていることがとても重要。投資家や自社事業開発部門に対して技術面で説明する際に、この基礎的な知識がとても役に立つ。
- 名倉さん
- リアルなケースに向き合い、答えが無い中で自分で深く考えて解を出していく中で磨かれるビジネススキルが重要。
- 本やYouTubeなどで基礎的なビジネスの知識は入手できる。
- より深く知識を理解するには、深く考えて自分で解を出さなければいけない環境に自分を置くことが重要。例えばビジネススクールの授業でグループワークをやるなど。
- 答えがある問題を解くことよりも、答えが無いリアルな問題に対して自分で深く考えて解を出していくことがスキルアップにつながる。
MIT SDMでの学びが卒業後のキャリアでどう生かされているか
- 氏家さん
- システムエンジニアとして、MIT SDMで学んだtechnicalなスキルがとても役にたっている。例えばsystem architectureやsystemのprinciplesなど。ispaceの中で、ソフトウェアエンジニアからシステムエンジニアへのポジションチェンジも、SDMで学んだことを仕事で見せた結果と言える。
- バックグラウンドが異なる外国人と共に、議論しながらプロジェクトを進めていく自分なりの方法(英語以外の部分)を手に入れることができた。
- 名倉さん
- MITが色々な形で提供してくれた、ものの考え方・捉え方、例えばsystem architectureやsystem dynamics、またその根底にあるシステム思考が、キャリア選択・実務両面でとても役に立っている。
- CIC Tokyoの設計など新しいものを考える、次の打つ手を考える、またその手を分析する際に、学習した考え方が活きる。
- 世の中で起こっている事象の背景にある事柄を理解、分析するときにも有効。
イノベーションエコシステム – 名倉さん
- MIT自身がイノベーションを起こしていかなければいけないと必死になっている。
- CICをはじめとしたボストン・ケンブリッジ市のスタートアップ支援機関と共に、アグレッシブにベンチャーを生み出す支援策を多く実施している。
- 学生主体のベンチャー支援プログラムもとても多い。例:MIT $100K、トップの賞金約1000万円。
- 都市型キャンパスとして、MITとTech系企業との連携がとてもうまくいっている。
- 日本でも大学の周りにTech系企業やVCを誘致できればいいが、地理的な制約もありすぐには難しい。CIC Tokyoは、物理的に離れていてもコミュニケーションをとれる場所・組織として、大学と産業界が双方の領域に踏み込んでいけるよう、イノベーションエコシステムの構築に貢献していきたい。
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